××夫婦、溺愛のなれそめ
「っ、もしもしっ?」
もしかして、仕事が早く終わったとか。期待に胸が膨らむ。
『あ、莉子。今どこ?』
「今、今……会社の玄関」
『そう。じゃあそのまま出てきて』
それだけで、電話は切れた。私は携帯を持ったまま、玄関出入口の大きな自動ドアをくぐった。
そこには、携帯を持ったまま笑顔で立っているレヴィが。
金茶色の髪が夕日に照らされて、きらきらと輝いている。
「お疲れ様。頑張って早く終わらせたよ」
そう言って笑ってくれるから、思わず泣きそうになった。
泣くつもりなんて、全然なかったのに。彼に会ったら辛い気分なんて忘れて、笑えると思ってたのに。
「莉子……どうした?」
温かい両手で包みこむようにして、そっと頬に触れられた。
「何か嫌なことでもあった?」
首を傾げるレヴィ。今にもキスしてきそうな距離に、急に恥ずかしくなった。ここ、会社の真ん前だった。
「大丈夫よ」
笑顔を作って顔を離そうとするけど、レヴィの力は緩まない。逃げようとするほど、頭ごとがしっとわしづかみにされた。
「ひいっ」
「大丈夫じゃないだろ。なのに、無理して大丈夫って言ってる。そういうの、良くない」