××夫婦、溺愛のなれそめ

「そのままで、じゅうぶん綺麗だよ」

……いや、そうでなくて。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、私が聞きたいことと違う。

ツッコミたい衝動を抑えていると、神藤さんが思わぬアシストをくれた。

「待ち合わせ時間より早く着きそうですから、化粧室でメイク直ししてください。ドレスコードなしの料亭なので、その格好で大丈夫だと思います」

そうそう、そういう具体的な情報が欲しかったのよ。

もしかしてレヴィって、育ってきた環境が違うせいでちょっと天然なのかしら?

結婚詐欺師にコロッと騙されちゃうし、お父様が『結婚できなかったらグループを追い出す』って言う気持ちがわからないでもないような。

もうちょっと世間を知ってから人の上に立てってことよね、きっと。

「ありがとう」

二人に対してお礼を言うと、車は騒がしい車道を離れ、閑静な住宅が並ぶ方面へさしかかった。

まだ結婚相手のこともよく知らないのに、今からそのお父様に会うことになる。

「ぼろを出さないように気をつけなきゃね」

レヴィの横で深呼吸をして、緊張を和らげようと試みる。そんな私の手を、彼はそっと握ってくれた。

『大丈夫だよ』と言うように。

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