××夫婦、溺愛のなれそめ
立派な門をくぐり、日本庭園を抜けると、木々に囲まれた料亭が現れた。
きょろきょろしないように気を付けながら、長い廊下を歩いていく。途中で化粧室に寄り、メイクを直した。
「ああ……良かった、まだいらっしゃらないのね」
レヴィと神藤さんに遅れて部屋に入ると、そこにはまだお父様の姿はなかった。
ちなみに神藤さんは忍者みたいに部屋の隅に正座して気配を消している。
「ねえ、二人の出会いはどう説明する?」
座りながらレヴィに聞くと、彼は首を傾げた。
「そのまま説明するよ。僕が一目ぼれして、その晩にプロポーズしたって」
「ええっ」
一目惚れって。そんな話、今初めて聞いたけど。いや、問題はそこじゃない。
「それ、まずいんじゃない? 内緒で二年くらい付き合っていたことにしておいた方が……」
「どうして。それで突っ込んだ質問されたらどうするの。答えられなかったら、すぐ嘘だってバレるよ。その方が心証悪いと思うけど」
そ、それはそうかもしれないけど。
初対面のときにあれだけ苦い顔をした神藤さんが、どうして今は平静を装っていられるのかわかった気がする。彼は、嘘をつけないレヴィの性格を知っているからだ。