××夫婦、溺愛のなれそめ

会長が席に着くと、すぐに料理が運ばれてきた。秘書さんは、神藤さんを誘って外へ。三人きりにされて、緊張はマックスに。

「父さん、彼女が僕の選んだ人。中岡莉子さん」

「中岡です。よろしくお願いいたします」

レヴィに紹介されて、再び頭を下げる。

「はい。瑛士の父です。よろしく」

瑛士って誰だっけ……って、レヴィか。お父さんには、瑛士って呼ばれてるんだ。

会長は緊張する様子はなく、歳のわりに綺麗な爪をした指で優雅に箸を動かし、料理を口に運んでいく。

「莉子さんはお酒はいけるかな?」

先に酒瓶を傾けられてしまい、箸を落としそうになってしまう。

「ごごごごめんなさい」

目下のものが先にお酌するべき。わかっていたはずなのに、それすら頭から吹っ飛んでしまっていた。

元カレの両親に会った時も多少緊張はしたけど、卒なくこなすことができたのに。今回はどうしてこんなに緊張してしまうんだろう。

「父さん、莉子にあまり飲ませないで。すぐ気分が悪くなってしまうから」

レヴィが代わりにお酌を受けてくれた。会長は気分を害した風でもなく、優し気な顔で笑う。

すぐ気分が悪くなってしまうくらい弱いわけじゃないけど……つい最近、お酒で記憶を無くした身だ。レヴィもここで前後不覚になってはいけないと、気を遣ってくれたんだろう。

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