××夫婦、溺愛のなれそめ
「良かったな、瑛士。期限ぎりぎりでこんなに綺麗な娘さんを見つけられて」
「ええ、彼女は天からの贈り物です」
って……。違うよ、それ。絶対違う。天からの贈り物じゃなくて、道端の落とし物拾っただけじゃん。捨てられてたんだから、落とし物より悪いかもしれない。
「お父さんとお母さんは何をしているの?」
会長に尋ねられ、酒瓶を持とうとしていた私がビクッとする。
「お父さんは普通の会社員。部長さん。お母さんの方がバリバリのキャリアウーマン」
おどおどしている私の代わりに、レヴィがよどみなく答える。
たしかにその通りだけど、私そんな話、したっけ?
疑問を追及する間もなく、会長の次の質問が飛んできた。
「そうなんだ。莉子さん自身は?」
「あ、プラスチック製造会社で事務を」
自分で答えて、すごく嫌になった。なんという地味な肩書……。ただの会社員って言っとけば良かった。
「正社員?」
「はい」
「社会人経験あり。いいね」
戦時中じゃあるまい、私と同じ二十六歳女性のほとんどが、社会人経験あると思うんだけど。何が「いいね」なのかわからない。