××夫婦、溺愛のなれそめ
専業になれないなら、結婚しない。私がそう言いだすと思うのか、レヴィの顔に焦りの色が見えた。
「ああ、もちろんずっと続ける必要はない。いきなり秘書室長は無理だろうから神藤の補佐として入ってもらう。最低三か月。莉子さん、妊娠は?」
「していませんけど」
「なら、体調的にも問題ないよね」
にっこりと笑う会長。
こ、この人……何考えているんだろう。結婚に反対するわけじゃない。だけど、まるで私を試すように、レヴィの秘書室に入れなんて。
そこで失態を犯したりしたら、この結婚はなかったことになるのだろうか。そしたらそのとき、レヴィはグループを追い出されてしまう?
そんなこと、承諾できない。秘書なんてやったことないんだもの。
レヴィに迷惑をかける前に、ここで身を引くしかない?
でも、でも……。
「……わかりました」
ここまで来てしまったんだもの。やるしかない。
「莉子、でも」
何か言いかけたレヴィを視線で制止する。
「大丈夫よ。私もあなたのこと、もっと理解する必要があると思うし」
レヴィは言いかけた言葉を無理してかみ砕いたような顔をした。