××夫婦、溺愛のなれそめ
会長と離れて緊張から解き放たれた瞬間に、すさまじい空腹を感じた。
神藤さんに途中でコンビニに寄ってもらい、適当に食料を調達してマンションに戻った。
「ああ、疲れた」
玄関を開けると同時、本音が零れ落ちた。
ハッと後ろを振り返ると、レヴィが苦笑していた。
「うん、僕も疲れた。神藤、今日はもう帰っていい」
「しかし……明日の朝食の準備が」
まだ自分の仕事は残っていると言わんばかりに、靴を脱いで上がってこようとする神藤さんを、レヴィが優しく制した。
「それくらいなんとかする。迎えだけ来てくれ。神藤もこれからはもっと自分のために時間を使うといい」
「今まで通りではご迷惑でしょうか」
「そんなことない。僕も妻を迎えるのだから、自立しなくてはと思うだけだ」
今まで何かと忙しいから、世話を焼いてくれる神藤さんに甘えてしまった。けれどこれからは、私生活については夫婦で営んでいこうと、そういうことだろう。
「そうですか……。会長も、そう望んでおられることでしょう。不便なことがあればいつでもお申し付けください」
神藤さんの目が、私のコンビニの袋に視線を止めた。