××夫婦、溺愛のなれそめ
「どうしてそんなに優しいの?」
みんなが私を疎んでいる。それなのに、あなただけは私を望んでくれる。
私の身の上話なんて、面白いことは何もない。そんなもののどこを聞いて、私を気に入ってくれたのか。考えてもわからない。
「きみが好きだから」
レヴィは王子様のような完璧な笑顔で微笑む。
その理由を聞いても、きっと答えてくれない。答える必要を感じていないのだと、直感する。
何も言えないでいると、レヴィはそっと体を離した。
「邪魔してごめん。食事の途中だったね」
そう言い、浴室の方へと歩いていく。
「あ、あの!」
思わず呼び止めてしまった。レヴィは首だけこちらを振り返る。
「あとで……そっちの部屋に行っていい?」
なんとかそんなセリフを絞り出すと、レヴィはふっと柔和に微笑む。
「もちろん。待ってる」
じゃあ、とお互いに背中を向けて一時解散した。
部屋に戻って座り込み、ぼんやりしながら食べ物を口にする。
私のことが、好き、だって──。
そんなセリフ、いつもなら鼻で笑ってしまうのだけど、今夜は何かが違うみたい。王子様のキスで変な魔法にかかったのかな。
そう思うくらい、心臓が鳴りやまなかった。何を食べても、甘く感じた。