××夫婦、溺愛のなれそめ
はあ、せいせいした。
息苦しかったオフィスを出て、うーんと伸びをする。
大学を卒業してから今までお世話になった会社だ。何の思いも浮かんでこないわけじゃない。
仕事は嫌いじゃなかったし、真剣にやっていた。
けど、最期が悪すぎた。社内恋愛の挙句、フラれ、女子社員たちの笑いのタネになり……。
「まあ、いっか」
全て終わった。もう過去のことだ。
明日からは生まれ変わったと思って。リセットリセット。
さっさと歩いて会社のビルから出ていく。もちろん、私を呼び止めるようなもの好きはいなかった。
私は地下鉄を利用し、レヴィのマンションに帰る。
途中で神藤さん行きつけのスーパーに寄ろうとし、思い出した。
そう言えば今日は、私の退職祝いに、どこかに外食しに行こうと言ってたっけ。
会長と会ったあの一件以来、神藤さんはご飯を作りに来なくなった。
代わりに私が作るようになったのだけど、そのクオリティは神藤さんには及ばず。
申し訳ないと思いつつ、レヴィが文句を言わないのに謝るのもおかしいので、自分のできる限りの食事を作って出すことにしている。
仕事をしていない間は、料理に時間をかけられるようになる。もっと勉強して、レヴィに美味しいものを食べさせてあげなくちゃ。