××夫婦、溺愛のなれそめ
会社員という肩書をなくし、軽くなりすぎた体ですたすたと歩いていると、車道からププッと軽くクラクションを鳴らされた。
「莉子」
声をかけられ、立ち止まる。車道にはレヴィの車が。今日は神藤さんが乗っていない。ということは、もう仕事が終わったのかな。
「お帰りなさい。早かったのね」
路側帯に停車された車に駆け寄ると、パワーウインドウが開いて、運転席からレヴィが言った。
「乗って、莉子。このまま食事に行こう」
レヴィの金茶色の髪が、夕日を反射して輝く。華麗な彼の姿を振り返りながら二度見していく人たちの姿が、バックミラーに映っていた。
「んー……着替えてからじゃダメ?」
会長と会うときはキレイめなスカートだったけど、今日はワイドパンツ。会社においておいた私物を持ってくるために動きやすい方が良かろうと、カジュアルな格好にしてしまった。
「どうして。そのままでも可愛いよ」
いや……だから、そう言ってくれるのは嬉しいのよ。だけどね、あなたの外見が王子様だから、私も気合を入れないと釣り合わないかな……とか、考えてしまうのよ。
「とにかく乗って」
レヴィは優しいけど、一度言い出したら聞かないところがある。私は着替えをあきらめ、そのままの格好で車に乗り込んだ。