××夫婦、溺愛のなれそめ

「違うの、ほら……今日に限って糖質の吸収を押さえるサプリメントを忘れちゃったな、なんて」

「なんだ。莉子は細いから少し太ってちょうどいいくらいだよ。気にせず食べて」

ありがたいお言葉です。私は心の中でレヴィに手を合わせた。

その言葉に甘えてデザートまで完食、あとは食後のコーヒーだけとなったとき。

ウェイターが席に近づいてきたかと思うと、何かこそこそとレヴィに耳打ちする。それを合図にしたように、レヴィが立ち上がった。

どうしたんだろう?

「莉子、聞いてて。今日は僕ときみの特別な日だから」

ぽんぽんと私の肩を叩き、レヴィはウェイターに案内され、ホールの中央に向かってスタスタと歩いていく。

目で彼を追っていくと、そこには入店した時に最初に目に入ったグランドピアノが。

レヴィが椅子に座ると、他のお客さんたちがちらちらと彼を見た。レヴィは一度深呼吸すると、両手を鍵盤の上に乗せる。

次の瞬間、彼の長い指が鍵盤の上で踊りだした。

聞いたことがあるけど、咄嗟に曲名や作曲家名が出てこない。

でもそんなことも気にならないくらい、優雅で優しい旋律は心地良く私を包みこむ。

すごい。プロみたい。プロの演奏、ちゃんと聞いたことないけど。


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