××夫婦、溺愛のなれそめ
「おはよう、莉子」
耳元で囁く優しい声で目を覚ます。ぱちぱちと瞬きすると、アラームも鳴っていることに気づいた。
アラームを解除して見ると、隣に座ったままのレヴィが頬杖をついてこちらを見ている。
夫婦らしく、同じ寝室で眠るようになった私たちだけど、いつもは私の方が先に起きていた。彼の朝食を用意するためだ。
用意ができたら彼を起こす。彼は目が覚めていても、私を焦らせないようにベッドの中で大人しく待っている。それが浅丘家の朝の儀式のようになっていた。
「どうしたの。目が覚めちゃったの?」
「うん。もう少し莉子の可愛い寝顔を見てたかったけど、そろそろいつも起きる時間だなと思って」
朝から脱力する。ハーフだからなのか何なのか、普通の日本人ではできないような言動を自然にする王子様に、性格の悪い私も毒気を抜かれてしまう。
「は、早くご飯用意するね」
照れてしまうので、さっさとベッドから抜け出す。別の部屋で着替えてキッチンに立つ。
昨夜神藤さんに教えてもらったおかずが何品かある。それを温め直して盛り付けるだけで立派な朝食が出来上がった。