俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「あのっ……! 今日は泊まっていかれないんですか!? できればその、まだ一緒にいたいんですけど……」

言った! ……言ってしまった。どう思ったかな。

チラッと彼を見ると目が合う。すると和臣さんはパンッと音を立てて顔の前で両手を合わせた。

「悪い、千和! できれば泊まりたいんだが……」

そこまで言われると把握できる。明日は仕事が大変なんだって。

「大丈夫です! 気にしないでください!!」

和臣さんの身体が一番心配だもの。万全の体勢で仕事に励んでほしい。

すると和臣さんは申し訳なさそうに、耳を疑うようなことを言い出した。


「本当に申し訳ない。今日は灯里が久し振りに実家に帰ってきているから」

「え……灯里ちゃん、ですか?」

たしかに私は灯里ちゃんから今日、実家に帰ることを聞いていた。

だけど待って。私の家に泊まれない理由が、実家に灯里ちゃんが帰ってきているから?

さすがにこれには目が点になる。

そんな私には気づかない和臣さんは弾む声で続けた。
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