俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
それはきっと、彼女が今の旦那さんと出会い恋をして結婚するまで、色々なことがあったことを知っているから余計かもしれない。


ふたりでやって来たのはオムライス専門店。お互い食べたいオムライスを注文し、その美味しさに舌鼓を打っていると、灯里ちゃんは急に思い出したように話し出した。

「そういえば聞きましたよ~。今日千和さん、お兄ちゃんとデートなんですよね?」

「どうして知ってるの?」

驚く私に灯里ちゃんは得意気な顔で言った。


「お母さんから聞いたんです。今日お兄ちゃんは千和さんとデートだって。今晩は健太郎さん、学会でいないのでお兄ちゃんがいないなら実家に泊まろうと思って」

弾む声で嬉しそうに話す灯里ちゃんに、ちょっぴり彼が気の毒に思えてしまう。


灯里ちゃんの兄は私たちが勤める会社の創設者であり、代表でもある一之瀬和臣。そして実は私の婚約者だったりする。

若い頃からその才能と手腕を発揮し、大学を卒業後二十三歳の若さで起業し、この業界ではちょっとした有名人だ。
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