俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「なんだよ、その顔は。言っておくけど、ちゃんと覚えているからな。……そもそも忘れられるわけないだろ? 五回もその日をお祝いしたんだから」

「……うん、そうだね。私も覚えているよ」

毎年ふたりでバカみたいに大騒ぎしたよね。それが楽しかった。

昔を思い出していると、陸斗は真剣な面持ちを見せた。


「このタイミングで再会できたのは、きっと神様が俺に昔の後悔を早くなくせって言っているような気がしてならないんだ。なぁ、千和。……六年も過ぎちゃったけど、ふたりで祝賀会上げないか? 千和の誕生日も兼ねて」

「陸斗……」

陸斗は結婚していて、今はとても幸せそうだ。私だって和臣さんと婚約中だ。

普通は今みたいに偶然ではなく、約束してふたりで会うなんてことはしない。

けれど私も陸斗と今、このタイミングで再会できたのには意味がある気がするの。

和臣さんとの結婚に対して少しだけ迷いがあるからかもしれない。

その結婚を二度経験した陸斗に、もっと話を聞いてみたい。
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