俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
『婚約しましたが、一度白紙に戻してもよろしいでしょうか?』
綺麗にラッピングされた箱の中を覗き見る。

「うわぁ……可愛い」

その中にはウエディングドレスを身に纏ったクマのぬいぐるみと、入浴剤のセットが詰められていた。

土曜日の昼下がり。

いつもより遅い時間に起きて一通りの家事をこなし、ふと昨日の帰りに、灯里ちゃんから一日早い誕生日プレゼントをもらっていたことを思い出した。

リビングのソファに座って開けると、思わず歓声を上げてしまった。

こうやって誰かに誕生日を祝ってもらえるのは、いくつになっても嬉しいことだ。

つい先ほど宅急便で両親からも誕生日プレゼントが届いた。

だけど、な。一番祝って欲しい人からは「お誕生日おめでとう」も言ってもらえそうにない。

結局私は和臣さんに自分の誕生日を告げることが、できなかった。

和臣さん、会社で見かけるたびに忙しそうにしていたし、基本私たちは会社であまり話さない。

それが彼と付き合うケジメだと思っているから。
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