俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「はぁ」と深いため息を漏らす灯里ちゃんを横目に、ズキズキと胸が痛む。

そっか、和臣さん……私の誕生日を本当は知っていたんだ。知らなかったわけじゃない、忘れていたんだ。

やっぱり私の判断は間違っていなかったのかもしれない。

きっとあれでしょ? 仕事や灯里ちゃんのことで頭の中はいっぱいで、私の誕生日なんて抜けちゃっていたんだ。

皮肉になる自分に嫌気がさす。けれどこれが私の正直な本音だ。

このまま彼と婚約を続けなくてよかったのかも。

そんなことを考えていると、灯里ちゃんは真剣な瞳を私に向けた。


「とにかく千和さん!! お兄ちゃんが反省をして、ちゃんと千和さんの気持ちを理解するまで情けは無用です! とことん突き放してください。それがお兄ちゃんのためでもありますから!!」

断言する灯里ちゃん。

彼の妹の言うことだもの。信じられるけれど……本当にこのまま突き放していたら、和臣さんは私の気持ちを理解してくれるのかな。

自分で決めた言ったことなのに、やっぱり不安になり迷う。

「あの、灯里ちゃ……」
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