俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
そうなのかな? 和臣さんも寂しいと思っているのかな?

それに言っても怒らない? 嫌いにならない? 呆れない?

だって私が抱いている感情は、子供っぽいもの。妹である灯里ちゃんにヤキモチ妬いているのだから。

そして灯里ちゃんより私を一番に考えてほしい。……なんて幼稚な想いを抱いている。

すべてをぶつけたら嫌われてしまいそう。

そう思うと灯里ちゃんの言う通り、和臣さんにすべてを打ち明ける勇気など出ない。

そして私はまた、モヤモヤするばかりだった。



「千和さん、今日は本当にお疲れ様でした」

この日の勤務を終え、灯里ちゃんとふたり帰り支度をしていると、彼女は急にしみじみと言い出した。

「大変でしたよね、お兄ちゃんがなにかと邪魔してきたから」

「アハハ……」

怒っている灯里ちゃんに苦笑い。

着替えながら今日のことを思い出す。

灯里ちゃんの言う通り、今日は何度も和臣さんが仕事中に様子を見に受付に足を運んできた。

それも遠くから見つめられるだけで、なにも言ってくることはなく。
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