俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
オフィスからエントランスへ出ると、そこにいたのはなんと陸斗だった。

「……陸斗? どうしてここに?」

「え! 千和さんのお知り合いですか!?」

驚く灯里ちゃんに「うん」と返事をすると、私に気づいた陸斗はホッと安堵の笑みを零した。

「よかった、会えて」

そして私の方へ来ると彼はムッとした顔を見せた。

「千和、お前なぁ今日約束していたのに、なんで連絡よこさないんだよ」

「約束って……あっ!」

思い出した、私……陸斗と今日食事に行く約束をしていたんだった。


「その顔だと忘れていたな? ったく、よかったよ。友達伝いに千和の勤め先を聞けて。せっかく予約したのがパァになるところだった」

「……ごめん」

本当に申し訳ない。週末に陸斗に連絡しようと思っていたのをすっかり忘れていた。

約束もなにもかも。

謝るものの、彼はご立腹の様子。

「苦労したんだからな、お前の勤め先を聞き出すの」

「だから本当に悪かったって」

そんなやり取りをする私たちを傍観していた灯里ちゃんは、ここでたまらず声を上げた。
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