俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
運ばれてくる料理はどれも美味しい。

それはこうして陸斗と楽しく会話をしながら食べているからかもしれない。


私たちはたくさん話した。出会ってから付き合い始め、別れる日までのことを。思い出すとどれも懐かしい思い出で、自然と会話も弾む。

けれどやっぱり私たちの間にあるのはもう友情関係だけ。昔好きだった人は、今は気の合う友人だった。

それを陸斗も感じ取っていたようだ。


「今日最後にこうして千和と一緒に食事ができて、本当によかったよ」

「……うん、私も」

心からそう思うよ。

食後に運ばれてきた珈琲を啜りながら、お互い美しい夜景に視線を奪われる。

これで陸斗とは気持ち良く「さようなら」ができる。

だからこそ最後にどうしても彼に聞きたいことがある。

「ねぇ、陸斗……最後にひとつ聞いてもいいかな？」

「なんだよ、急に改まって。どうぞ」

聞いてくれと言わんばかりに手のひらを見せた陸斗に聞いた。
< 69 / 92 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop