俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
オフィスがある階にたどり着き、エントランスを抜けていく。

「それなのに私ってば変なことばかり妄想しちゃっていて……恥ずかしいです」

「え、恥ずかしいこと?」

着替えをしながら聞くと、灯里ちゃんはギクリとなる。


「健太郎さんには呆れられたんですけど、千和さんと彼の仲があまりに親密そうだったので、これはもしや本当にお兄ちゃん、千和さんに捨てられちゃうんじゃないかと心配で心配で……」

「えっ!? そんなまさか!」


まさか灯里ちゃんがそんなことを心配していたなんて。すぐに否定をし、和臣さんに自分の気持ちを彼に伝えるつもりだと話すと、灯里ちゃんは心底安心した顔を見せた。


「よかったです、安心しました。……そうですよ、お兄ちゃんはハッキリ言わないと伝わらない人なんです。なので千和さんの想いをしっかり伝えてあげてください」

「……うん」

受付に向かいながら答えると、灯里ちゃんはニッコリ微笑んだ。
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