俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「ではおふたりとも。お気をつけて会社までお越しください」

「――え?」
「は? どういうことだ?」

私と和臣さんは声をハモらせてしまう。そんな私たちに田中さんは珍しくクスリと笑った。


「息もぴったりでなによりです。……どうか仲直りをしてからご出社くださいませ。でないと私の仕事が増える一方なので」

もしかして田中さん、私と和臣さんのことをふたりっきりにさせてくれようと……?

田中さんの気遣いを和臣さんも感じ取ったようで、「お昼までには出社する」とぶっきらぼうに言った。

「かしこまりました。では私はここで」

丁寧に頭を下げ、駐車場へと去っていく田中さん。

彼の姿が見えなくなりふたりっきりになると、ちょっぴり緊張してしまう。

「えっと……あれだ、とにかくバスで戻るか」

「は、はい」

ぎこちなく会話をしながらバス停に向かう私たちの手は、しっかりと繋がれたまま。

最初話を聞いた時は不安でたまらなかったけれど、本当に大きな怪我がなくてよかった。
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