俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
ドアの向こうからやって来たのは、真っ赤なバラの花束を抱えた和臣さんだった。

「え……和臣さん?」

「やだ、お兄ちゃんってばそのバラの花、どうしたの!?」


驚く私と灯里ちゃんを余所に真っ直ぐ私の前に来ると、彼は突然ひざまつき、バラの花束を私に差し出した。

私を見つめる彼の切れ長の瞳に射貫かれ、ドキッとする。

「和臣さん……?」

再び彼の名前を呼ぶと、和臣さんは真剣な面持ちで私を見上げたまま言った。


「大川千和さん、あなたとここで出会えた奇跡に感謝しています。俺はこの先、あなたなしでは生きていけません。……どうかこんな僕と結婚して一生そばにいてくれませんか?」

この前のドラマチックなプロポーズとは違うのに、なぜだろうか。

今のプロポーズの方が嬉しいと思えてしまったのは。

嬉しくて涙がポロポロと零れ落ちる。

「……はい、こんな私でよければ」

それでも彼からバラの花束を受け取り返事をすると、和臣さんは立ちあがり私を抱きしめた。
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