その日、" 恋 "を知りました。
息が漏れ、満員電車の匂いで気分を悪くした私に助けの手を差し伸べるかの様な手首に握られた手
これは、" 誰の手だろう "
そう思った時車内アナウンスが流れ始めた。
「 ✕✕✕駅、✕✕✕駅で御座います …」
その瞬間、プスーッと音を鳴らして開いた出口目掛けて私の手首を強く掴む" 誰か "は無理矢理私を外へと引っ張り出す____勿論、学校への駅はもう一つ先なのだけれども 。
外に出た瞬間、朦朧としていた視界が一瞬にして開き鼻に焼き付いていた酷い臭いは全て無臭の空気の中へと消えて行った
「ぁ!ありがとう御座いますッ!!」
私はすかさず、体調の悪かった私を満員電車から外へと引っ張り出してくれた" 誰か "の顔を見ずに頭を深々と下げお礼を大きめの声量でガンッ!と言い放つ。
「……否、お礼される様な事等俺はしていない。ただ今にも倒れそうな君を外へと連れ出したまでだ。」
この声色は、普通の社会人男性の中でも低く" 冷たいアイスクリーム "の様な印象を持った。
私は勢いで深々と下げていた頭を上へとあげる───その瞬間、瞳孔に逸早く映ったのは
" シャキッとズレ等なしに綺麗に着ているスーツに 私の身長を楽々と追い越す高い身長、微かに漂う煙草の香り、前髪で隠れて片方だけしか見る事が出来ないその〝冷たく 人生 とやらに興味を全く示さない瞳〟"
学校にいる男子、街中を歩く男性、画面越しにいる男子or男性その全てとは何かが違う雰囲気……
目の前にいる" 貴方 "に私は言葉一切口に出さず只、視線を奪われていた 。