眠り王子が人ではなかったのですが。
ブラッシングをしばらく続けていると、陽はスヤスヤと眠りの世界に旅立っていた。
動かしていた手を止めたが、催促がなかったので多分寝たのだろう。
「すごいね平塚さん」
『え??』
小さくパチパチと雪島君が手を叩いた。なんだと私は首をかしげる。
「陽ってなかなかその姿を人に見せないんだよ」
『そうなんですか??』
「……その姿は、かなり無防備な状態だから」
紅茶を口にしていた鬼田君は、ティーカップを置き雪島君に同意するように頷いた。
「しかも寝ちゃうなんて……ココまで気を許してるなんて、平塚さん陽の彼女なの??」
『グフッ!!』
タイミングよく飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。なに言ってるんだ雪島君は!!
『彼女なわけ、ゲホッ!!……席は隣ですけど、話したことなかったですし。この前初めて喋りました』
「えー!?それでその懐きよう??信じられない」
彼は普段とんでもない警戒心を装備しているようだ。彼らの驚きようから察した。
よくわからないけど。この前初めて話したばかりなのに、気を許してくれていいと思われたんだろうか。
仲のいい友達なんていなかったから……嬉しい。
主に雪島君が大騒ぎする中、スヤスヤと眠る陽の頭を優しく撫でた。