繋いだ歌【完結】
「これ、動画サイトとかにあげないの?」
「え」
動画サイト?
目をぱちぱちとさせ、僕は首を傾げる。
「正直、こんなクオリティ高いと思っていなかったから驚いた。
絶対に人気出るよ。なあ、これ動画サイトあげようぜ」
「いや、でも僕動画なんて作れない」
「俺が作る。こう見えて絵を描くの得意なんだぜ」
「……」
「勿体ないよ。他の人にも聞かせてやりたい。なあ、やっぱり文化祭で歌おうぜ。
絶対にお前のファンになる」
「無理だよ、これはボカロに歌わせたもので僕が歌うものじゃない」
「何言ってんだよ、ギターで弾き語りするのにぴったりじゃないか」
「バンドとかの枠って人気なんだろう? 歌いたくないのに僕がその時間もらって、披露する程じゃないよ」
「俺が保証する。歌で泣いたりとか、初めての経験なんだよ。そんなの初めてなんだ。
来栖の歌声とこの曲があればバッチリだよ!」
必死に僕のことを説得する田所。
だけど、僕は人前で歌いたくなんてなかった。
ボカロの為に書いた曲を僕が歌うなんて、絶対に違う。
感動なんてさせられない。
ボカロが歌ったからよかったんだ。