繋いだ歌【完結】
「騙されたと思って、まずは動画投稿しようぜ」
「乗り気じゃないんだけどな」
「音源、この音源くれないか? 俺、帰ってそっこー動画作って来る」
「……待って、ROMに焼く」
「あ、それ以外にもあるなら何曲か焼いて。一緒に作って来る」
「……わかった」
渋々頷き、僕は月影色以外に四曲程入れた。
受け取った田所はとてもいい笑顔を見せ、僕の家を後にした。
田所がいなくなった部屋で、僕は一人月影色を流す。
泣ける程の歌、だったのだろうか。
僕にはそれがわからなかった。
だけど、決して悪い気分ではなかった。
評価をされたいとも、誰かに聞いてもらいたいとも思っていなかった僕が初めてもらった感想だった。
翌日、田所は学校に来なかった。
大して気にしていなかったけど、そんな田所から連絡が来たのは放課後だった。
【完成した。家の前にいる】
最初、このメールを受け取った僕は意味がわからなかった。
完成したって何が? てか、家の前にいるって何。僕の家?
どういうこと?と返信したけど、音沙汰なし。
急いで家に帰ると、マンションの入り口前に田所が立っていた。
見た通り元気そうだ。学校を休んだのは仮病だったのか。