繋いだ歌【完結】
「……文化祭で歌えよな、絶対気に入ってもらえる」
「本音は嫌だけどね」
「なんか、音楽関係の人が来るらしいぜ。目に留まるかもな」
「まさか」
そう言って、田所は再び眠りに就いた。
音楽関係の人が来るって、何でだ? 誰かの知り合い?
後で詳しく聞いてみるか。
そう思ったけど、僕はすっかりそのことを忘れてしまっていた。
その日の内に動画サイトに僕は月影色を投稿した。
投稿したい曲はたくさんあった。
田所のお陰で、聞いてもらうことの喜びを僕は初めて知ったんだ。
夏休みに入り、僕は曲作りに没頭した。
楽しかった。曲を作るのは。
だけど、田所はそうじゃなかった。
彼女が出来た田所は、動画を作る時間を彼女に割いた。
それが決して悪いわけじゃない。
責めることはしなかったけど、不満は募っていった。