繋いだ歌【完結】


部屋に併設された電話からプルルルとひっきりなしに音が鳴っていて、寝ぼけながら僕は受話機を取る。


「はい」

『お時間になりますので、御退室の準備をお願いいたします』

「あ、わかりました」


結局、一曲も歌うことなく僕は清算を済ますとカラオケを後にした。
お腹空いたな。そういえば、昨日の昼から何も食べていない気がする。


折角真史が作ってくれたのに、食べるの忘れてた。


朝方にやっているお店なんて、牛丼屋かファミレスぐらいだ。
目についたファミレスに入ると、定食を注文する。


ご飯を待っている間ふっと浮かぶメロディ。

あ。ルルラ、ん……このメロディいいかもしれない。次の曲に使おうまで考えてから僕は苦笑した。
無意識に音楽のことばかり考えている自分に。

離れたかったのに。どうしたって僕から離れてくれないらしい。
だけど、きっともう無理なんだと思う。


僕は音楽が切り離された生活ってものをしたことがない。
僕が音楽のことを考えるのは息をするのと同じだった。


この物足りなさは埋まることがないかもしれない。
でも、いつか埋まるかもしれない。


追い求めていれば、いつか。


…………帰ろう。
これを食べたら家に戻ろう。


僕の居場所はきっと、そこだ。
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