繋いだ歌【完結】
名前も知らない君へを書きあげた僕は、これを入れたアルバムを作りたいと真史に言った。
初めて僕からアルバムにしてくれと言ったことに、真史は相当驚いていたっけ。
そうして出来たアルバム『欲す』は、僕のお気に入りになった。
僕の素直な想いを描いたアルバムだったから。
何年経ったって、僕は探すつもりでいたよ。
諦めるつもりはなかった。
おじいちゃんになろうが、諦めたくなかった。
僕の命と引き換えに君に出会えるのなら、僕は喜んで差し出しただろうな。
あ、でも僕が死んじゃったら僕の歌を歌わせられない。
そんなの嫌だな。
曲を作り終えると、僕はふらーっと駅前を歩くのが習慣になっていた。
それは、探し求めたたった一人を探す為だけだった。
ストリートミュージシャンを見つけては、一曲聞いて帰る。それの繰り返し。
だけど、その日は違っていた。
聞こえた歌声。耳に入った瞬間、心が揺さぶられた。
雷が落ちたかのように、僕に衝撃が走った。