繋いだ歌【完結】
探し求めていた人。
それが君だってすぐに思った。
泣きそうになった。
求めていた君に出会えて。
僕は逸る鼓動を抑えながら、その人の前に立った。
黒くて肩まである髪の毛。視線を伏せながら歌う彼女には、どこか暗さがあり歌っている曲とは合わないって思った。
流行りのポップなんて似合わない。
僕が紡ぐ歌を歌って欲しい。君にぴったりのメロディを作るから。
傲慢すぎる感情を出すことなく、僕は彼女に声をかけた。
「……上手ですね」
本当にペラペラでうっすい言葉。だけど、なんて声をかけたらいいのかわからなかったんだ。
僕は君を待っていたから。ずっとずっともう何年も。
君を褒めるのは言葉にしたらこんなに薄っぺらいんだなって思った。
どうしたらわかってもらえるのか、どうしたら君が必要だと思ってもらえるのか。
言葉で心を動かせないのなら、行動で示すしかない。
真史が昔、僕を毎日待ってくれたように。
そうして、僕は毎日その時間前にはこの場所に来るようにしていた。
来ない君を待つのも、僕には楽しい時間だった。