繋いだ歌【完結】
名前、聞いてなかったな。
知りたいな、なんて名前なんだろう。
僕が求めていた希望の光のような子だから、ひかりちゃんとかだったら面白いな。
そんなわけないか。
はあ、寒い。雪が降っているだけある。
その時、ケイタイが震えていることに気付きポケットから取り出すと、真史からの着信だった。
「はい」
『今、どこにいるんですか』
「駅前」
『駅前? この雪の中ですか? 何しているんですか。迎えに行くんで待っててください』
「ううん。帰らない。帰れない。だって、いたんだ」
『え、いたって』
昨日、彼女に出会ったことは真史に伝えていなかった。
案の定何のことを言っているのかわかっていない。
「僕の探し求めていた君が」
『え』
「真史、僕が提供する曲って後どれくらい?」
『春にあるドラマの主題歌と、ラヴールの新曲ですね』
「ん。わかった。それは作る。だけど、それが終わったらもう仕事取らないで。僕はもう彼女の為以外に書かない」
『本気なんですか?』
「うん。当たり前でしょ? 僕はずっと待ってたんだよ」
『……はあ、わかりました。社長は私が説得します。ただ、きっとその人物をデビューさせろって急かすと思いますが』
「はは。うん、それでもいいよ」
通話口から真史の大きな溜め息が聞こえる。これは僕の言ったことに対してではなく、社長の対応が面倒だからだと思う。