繋いだ歌【完結】
『暖かくしてますか? 風邪引きますからね』
「大丈夫大丈夫」
『そういう危機感がケーには足りません』
「はは。確かに」
それは僕も思う。足りないよね。
風邪引いたならそれでもいっかなとか思ってしまうけど。
あ、でも、風邪引いたら彼女には近付けないな。うつしちゃダメだし。
程々にしないといけないなあ。
それからほぼ毎日通ったけど、彼女が来ることはなかった。
一週間が経ちそうな時、僕は真史の言った通り風邪を引いてしまった。
体調が少し良くない。寒気がする。でも、まだ熱はない。
だから、待てる。
そして、向かった僕はやっと彼女と出会えた。
ドキドキしながら僕は少し離れた場所で、彼女を見つめた。
僕に気付くことなく、彼女はギターを弾き歌い始める。
ああ、やっぱり僕は君の歌声が凄く凄く好きだ。
泣きそうになるのを抑えながら、歌い終わった彼女に話しかける。
無愛想に答える君も、どんな君も、僕には大切に思えた。
だけど、一つ引っ掛かったことがあったから彼女に尋ねる。
〝君と私で半分コ。悲しみも、憎しみも″
ここのサビが好きで、僕にしては珍しくCDを買ったんだ。
典型的な幸せな恋人同士を歌った曲。
僕はそう捉えていた。
だからこそ、彼女が切なそうに歌っていたのが引っ掛かったんだ。