繋いだ歌【完結】


『暖かくしてますか? 風邪引きますからね』

「大丈夫大丈夫」

『そういう危機感がケーには足りません』

「はは。確かに」



それは僕も思う。足りないよね。
風邪引いたならそれでもいっかなとか思ってしまうけど。
あ、でも、風邪引いたら彼女には近付けないな。うつしちゃダメだし。


程々にしないといけないなあ。
それからほぼ毎日通ったけど、彼女が来ることはなかった。

一週間が経ちそうな時、僕は真史の言った通り風邪を引いてしまった。
体調が少し良くない。寒気がする。でも、まだ熱はない。

だから、待てる。
そして、向かった僕はやっと彼女と出会えた。


ドキドキしながら僕は少し離れた場所で、彼女を見つめた。
僕に気付くことなく、彼女はギターを弾き歌い始める。


ああ、やっぱり僕は君の歌声が凄く凄く好きだ。
泣きそうになるのを抑えながら、歌い終わった彼女に話しかける。


無愛想に答える君も、どんな君も、僕には大切に思えた。
だけど、一つ引っ掛かったことがあったから彼女に尋ねる。


〝君と私で半分コ。悲しみも、憎しみも″


ここのサビが好きで、僕にしては珍しくCDを買ったんだ。
典型的な幸せな恋人同士を歌った曲。
僕はそう捉えていた。

だからこそ、彼女が切なそうに歌っていたのが引っ掛かったんだ。
< 36 / 41 >

この作品をシェア

pagetop