繋いだ歌【完結】

「諦めたわけじゃないけど……、その曲俺に聞かせてくれない?」

「え」

「な、聞かせて。俺聞きたい」

「……あ、ああ、うん」


強引な田所の圧に負けて、僕は頷いていた。
断ればよかったとすぐに後悔したけど、後の祭り。

あれよあれよと、今日の放課後僕の家に来ることが決まってしまった。


何がいいかな。放課後までの僕の頭の中は、田所に聞かせる曲をどれにするかで頭がいっぱいだった。
雨が降って春かな、それとも、流れ幸かなあ。


タイトルと曲を思い浮かべる僕は、思ったより楽しみにしていることに気付いた。


誰かに聞かせることは初めてだった。
誰かに聞かせたいと思ったことはない。

でも、他の人が聞いたらどう思うのだろうと思ったことはある。

一度、自分で歌って録音したことがあるけど、イメージと違っていてすぐに削除した。
それからはボカロに代わりに歌ってもらっていた。

機械の音声だけど、僕はそれだけで満足していた。


作るだけ作って、曲だけが溜まっていくことを僕はなんとも思っていなかった。
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