繋いだ歌【完結】
今思えば、自信がなかったのかもしれない。
僕の作った曲は評価されるものだと思っていなかったし。
世間で人気の曲に勝てるとも思っていなかった。
頭の中で溢れ出るこの旋律を苦痛なものにしたくなかっただけかもしれない。
「へえ。ここが来栖の部屋か」
放課後、一緒に僕の家に帰り部屋に入った田所は開口一番そう言った。
普通のどこにでもあるような、五階建てのコンクリートマンション。
僕の部屋は音楽関連の本でいっぱいだ。
「適当に座って」
お世辞にも綺麗な部屋とは言えない。
ゴミが散らかっているというより、楽譜が散らばっている。
それはボツだと丸めた楽譜だったり、歌詞だったり。