たぶん、トクベツちがいな恋。
多分茶々はまた、あまり深く考えていないのだろう。
今まで勉強を教えたりという名目で、何度も2人で会ってはいた。でも、いざ改めて2人での約束となると、数年前のトラウマを思い出す。
茶々が来なかったという過去の現実。きっと小さいことなんだと思うけど、あの時の“ 痛み ” は、忘れられない。
…今回は、珠理のことももうなくなったと思っているし、あれは色々と重なっただけだって分かってはいるけど。
「そーいえばお前、試験当日はどうすんの?朝早くから、鎌倉出て東京まで来るわけ?」
話題を変える。あんまり昔のことは出したくなかった。
『まさか。そんな早起きやだもん。前日は近くのホテルに泊まるよ。もうね、初と右京くんと、とっちゃった』
……!?
「はぁ!?3人で泊まんの!?」
『え…?うん。右京くんはさすがに隣の別の部屋だけど…』
「…」
だ、大丈夫なのか、それは。いくらなんでも男が隣にいるってどうなんだ。初ちゃんがいれば問題ないのか。いやでも、茶々のこと狙ってるっぽいあの男がいたら…。
「…おっまえ…、またそーやって考えなしに動いて…っ」
『は?考えなしじゃないでしょ。朝電車止まったりしたらそれこそ大変じゃない!』
「ちげーよ。そーいうことじゃねぇ」
男と女で何かあったらどうすんだよって意味なのに、これを直接言う勇気はなかった。ずっと黙っていると、『どーいうことなのよわけ分からない』と、怒られてしまった。
…わけ分からないのはお前だ、バカ。