たぶん、トクベツちがいな恋。

・・・

茶々の試験が行われたのは、冬の中でも最も寒い2月のこと。

俺はK大の学生だし、受験者と関係者以外は中に入れないことになっていたから、当日は家で静かに待つことになった。

バイトは入れなかった。茶々との約束があったから。

朝起きてカーテンを開けると、シトシトと湿った音が響いていた。気温も低い。小雨なのか、それとも霙(みぞれ)なのかよく分からないけど、天気が良くないのは確かだ。

どんよりと広がる鉛色の空を見ていると、なんとなく憂鬱な気持ちになった。


時計の針が8時を指したから、なんとなくトーストを口に運んだ。朝の報道番組をぼーっと見つめていると、テーブルに置いてあったスマホが鳴った。

その後も何度か連続して震えている。

口を動かしながらそれを見ると、いつものメンバーから、それぞれのメッセージが飛んで来ていた。その先頭には、茶々の名前。


“ 行ってきます ”


スタンプも絵文字もない、シンプルなメッセージ。

それに対して、他の3人は応援のスタンプやらコメントを送っている。

…こんな朝早くにみんなが揃っているということは、きっと全員が茶々からの言葉を待っていたのだと思う。絶対そうだ。


“ がんばれよ。”


俺も、送った。

文字でしか伝えられないことにもどかしかも感じるけど、これくらいしかできないのだから、仕方がない。



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