たぶん、トクベツちがいな恋。
『なんか今日の近海、ちょっとご機嫌。何かあったの?』
茶々のお疲れ様会の話も終わり、めごちゃんも混じって雑談をしていたら、ふと珠理に突っ込まれた。
思わず、服を触っていた手が止まる。
「…お前、声だけで分かんのか」
『分かるわよ〜!近海のことだもん。なんだって分かるわ』
「気持ちわりーな」
そんなに、楽しみが声にまで滲み出てるのか。気持ち悪いのは自分だと気付いたら、笑いがこみ上げてきた。
珠理が聞いてくるから、今日のことを話した。これから遊びに行く約束をしたと言ったら、俺よりも楽しそうに「デートじゃない!」と突っ込まれた。絶対言うと思った。
『ヤダ〜近海ったら。いつの間にそんなに進展してたわけ? やるじゃない♡』
「そんなんじゃねーよ。流れだ、流れ」
『まったまた♡』
…本当に流れだった。みんなと集まってどっかで遊ぼうってことだったんだと言うと、少し珠理も納得していた。
それでも、ニヤニヤしながら「どこ行くの」だの「何するの」だのしつこく聞いてきたから、面白がっているのには変わりないらしい。
これがリアルに充実している奴の余裕なのかと思うと、電話の向こうの奴をぶん殴りたくなった。
『でも、よかったわねぇ。茶々とお出かけなんて。嬉しいじゃない。素直に喜んだら?』
「は?うれしーよ普通に。喜んでるよ、これでも」
『ふふふ、分かりづらーい』
分かりづらくて結構。俺は珠理みたいに好きを全般的に出せる人間じゃない。だからこれくらいでいいんだ。