たぶん、トクベツちがいな恋。


珠理と茶々の話をしていると、どうしても思い出す。中学の頃。出会ったばかりの頃。

あの時とは違う。珠理だって、当時好きだった人と、今はしあわせに過ごしている。

茶々だって、前に進んでいる。珠理といても、辛い顔をしなくなった。自然体の茶々でいられるようになった。


でも、俺は忘れられない。あの日の茶々のことを、今だって。


“ 尾張 茶々です ”


目を泳がせながら、自己紹介をしてくれた。あの日の一目惚れから、俺は何ひとつ変わってない。


「……っ、珠理」


胸が、締まる。


『ん? なぁに?』


ずっと、こわくて言えなかったことがあった。
どうしてこわかったのか。その理由はあまりはっきりとは分からなかったけれど、たぶん、それは珠理に対する劣等感から。

絶対、かなわない相手だと思っていたから、言えなかったんだ。



「—…俺、いっていーかな。茶々に」



どんな形であれ、茶々は、珠理のものだったから。
茶々は、親友のことが、大好きだったから。

それに、俺が横からふれていいのか、分からなかった。



「いい? 色々、変わってしまうかもしんねーけど…」


でも、言いたくなった。

本当はすごくこわいけど、今日はいい機会だと思った。

ずっと溢れそうになっていた言葉。だけど、大変な時だからって必死に抑えてた言葉。

それを、ちゃんと伝えられたらって、思ってしまった。



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