たぶん、トクベツちがいな恋。
『うん。近海がいいと思うなら、いいと思う』
やさしい声が響いた。だけど、まっすぐとした声。
こういう時、「頑張ってね」とか「しあわせにしてあげて」とか、もしかしたら言われるのかもと思ったけど、珠理は何も言わなかった。
きっと、もう割り切っている証拠だ。俺は俺で動いていいって、きっと思ってくれているんだ。
少し遠くから、ちゃんと応援してくれているのが分かった。俺と珠理と茶々の関係性は、たぶん、周りから見たら複雑な形をしているのかもしれない。
きれいな三角形じゃない。他にももっと、色々なものが加わった、イビツな形。
「…じゃ、集まる日はちゃんと空けとくから、また詳細決まったら教えてよ」
『分かった〜! 近海、今日寒いから気をつけてね。茶々も』
「あぁ、ありがと」
最後は笑顔で終われた。
電話を切ると、すとんと肩の力が抜けた。思わず、そばにあったベッドに座り込む。
「っ、はぁ〜〜…」
長いため息。たぶん、ものすごく緊張していたのだと思う。
珠理といても、あまり自分の気持ちを話すことなんてなかった。特に、恋愛ごとに関しては。
珠理がめごちゃんのことを話してくることは多々あったけど、俺は何も話してこなかったから。
“ 近海がいいと思うなら、いいと思う ”
珠理らしい答えだと思った。
アイツが俺の気持ちにいつから気づいていたのかなんて分からないけど、大袈裟でもなんでもない、いつもの何気ない返事のように、そう言ってくれたことがうれしかった。
「…いいと思う、か」
茶々との待ち合わせまで、あと2時間。
今日、言えたら、言おう。
試験を終えた彼女が、まっすぐ俺のところに来てくれたら。
俺の名前を、呼んでくれたのなら。
俺を見て、笑ってくれたら。
ちゃんと、言おう。
ずっと出かかっていた気持ちを、伝えたいと思う。
茶々のことが、何よりもトクベツだって。