たぶん、トクベツちがいな恋。
店員さんが可愛らしくラッピングしてくれたそれを持って、俺は約束の場所に向かった。もう、時計は約束の13時をさそうとしていた。
「…」
傘をさして、待つ。雨は朝よりも少しだけ強くなっていた。雪になるかと思ったけど、これは1日雨になる気がする。
寒い。身体の芯から冷えそうな寒さだ。
ザアザアと降り続く雨に、思わず耳を塞ぎたくなる。
キンキンに冷えていく指先で、スマホのボタンを押す。だけど、まだ連絡は入っていなかった。
…今、どこにいるのか。
なんとなく、不安になる。もしかしたら、もうこちらに向かって来ているのかもしれないし、まだ終わっていないのかもしれない。
嫌なトラウマをかすかに思い出すけど、それはすぐに追い払った。
あの時だって、茶々はしっかりと連絡をくれた。行けないと、正直に言ってくれた。
「…さみ」
白い息が、広がる。マフラーに口元を埋めて、温めるように息を吐くと、肌が熱くなって、そのあと少しだけ湿った。
左腕に付けた時計は、もうとっくに13時を指している。
…まさか、迷ってる? そんなわけないか、駅の改札を出て、すぐだし。
まだ、試験が終わっていない? でも、時間はキッチリと決まっているはず。俺たちが受けた時も、長引くなんてことはなかった。
電話をしようかと思ったけど、万が一試験が絡んでいたらと思うと、かけられなかった。その間にも、身体は冷たい空気に晒されて、節々が痛くなってくるほど。
30分待って、来なかったら連絡してみよう。って言っても、あと10分くらいしかないけど。
約束を忘れられていたら…とも思ったけど、それはないな。あんなに行きたがっていたチョコレートカフェだし。
昨日だって、一応、確認したし。