たぶん、トクベツちがいな恋。


今まで、何ひとつ努力してこなかった俺に、天罰が下っているのだろうかと、思ってしまった。


『ごめんなさい。試験場出た時に、右京くん倒れちゃって…っ。まだ大学の保健センターにいるの。ごめんなさい、近海』

「……」


『もうすぐお迎えが来るから、そのあとすぐに行く…っ。ごめんなさい…!』


連絡ができなかったのは、色々とバタバタしていたら、時間を忘れてしまっていたと、茶々は何度も謝っていた。

初ちゃんのお迎えが来て、その後ウキョウくんと2人になった時に、彼が力尽きて倒れたと。

そう、教えてくれた。震えている声で、何度も謝っていた。


「…いーよ。お前がウキョウくんのとこ付いててあげたいなら、そうして」

『近海、待って! あっ…、右京くんのお迎え来た…! 近海、これから行くから!ちゃんとそこにいて、お願い!』

「…」



——そうして、その電話は切れた。

ちゃんと待っててと、念を押して。


大学から、ここまですぐだ。だから、あと少し待っていれば、茶々には会える。

隣で、同じ塾で頑張ってきた友達が倒れた。試験前から具合が良くなかったのだとしたら、きっと彼女なりに心配していたのかもしれない。

…倒れて、ちゃんと付き添って、どうしたらいいか頭を悩ませて、必死だったんだと思う。

茶々は、ツンツンしているわりに、そういうところはしっかりしているし、世話焼きだ。やさしい子でもある。それは、痛いほど分かっている。

目の前で倒れていたウキョウくんを、放っておけなかった。ただ、それだけだ。


……でも。



“ 右京くんって、珠理に似てる ”



茶々のあの日の言葉が、胸に再び刺さってきた。抜けない。何も抜けない。

中学の頃の、茶々の誕生日の日のことも、珠理の背中ばかりを追いかけていた茶々のことも、ウキョウくんと仲よさそうに話していた茶々のことも。


抜けないどころか、ズブズブと、さらに突き刺さっていく。




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