たぶん、トクベツちがいな恋。


・・・


「オーミ…!!」


茶々が傘もささないで走って来たのは、電話が終わって15分後くらいだった。

強い雨。揺れる傘。髪の毛の先は、湿って変にまとまっていた。


大きく肩を揺らしながら、駆けてくる彼女。マフラーもしっかりしていない。急いで来たんだっていうことが、一目で分かる。


「近海、ごめんね、ごめん…!!」


折りたたみ傘が見えているのに、それに見向きもしないで、茶々は薄いピンク色のタオルを取り出した。

それを、俺の頭にかける。自分も濡れているのに。


「近海、びしょ濡れ…っ。ごめん、寒かったわよね、ごめんなさい…!」


青い顔をしている。きっと、心から反省しているんだと思う。何度も頭を下げるその行為に、冷静にそんなことを思ったりした。


「近海…、どこか入ろう。風邪ひいちゃう」

「…」


茶々に、腕を掴まれた。白い手の甲から、いくつもの雨粒が流れては、地面へと吸い込まれていった。

…こんなに、濡れて。それでも、俺のところに来てくれた。1時間以上、遅れたけど、でも…。




「…もういーよ。帰れよ、お前」



心に突き刺さったものは、まだ、抜けてくれなくて。

それどころか、残った痛みは、だんだんと悪化して。



「…オーミ、」

「もう知らねぇ、早く帰れよ!!」

「…っ」



それは、自分でも驚くくらい、凶器になった。



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