たぶん、トクベツちがいな恋。
♢ ♢ ♢
近海の前では、なぜか自分をまるごと見せることができる。
それに気づいたのは、いつからだろう。
「ちゃっちゃん、おつかれ」
「…あぁ、右京くん。熱、もう下がったの?」
「うん。おかげさまでね。あの時は本当にありがとう。助かった」
…一昨日、二次試験を終えた。
ものすごく寒くて、ものすごく天気が悪い日で、なんとなく暗い気持ちになるような、そんな日に。
「インフルエンザとかじゃなかったのね? 突然倒れるからビックリしたわよ」
「ハハ、うん。一応病院で検査したけど陰性。一晩寝たらすぐに下がったわ」
「…そう」
二次試験が終わって、試験の様子を伝えに塾に来たら、右京くんも来ていた。熱が出ていた状態で受けていたことを、報告しに来たらしい。
お前は本番に弱すぎだだの、自己管理がなってないだの数々のことを突っ込まれたらしいけど、最後にはよく頑張ったと認めてもらえたらしい。
右京くんは、頭がいい。あたしより絶対に良い点は取れているし、学部の偏差値もあたしのところよりも高い。
…今、近海がいる学部だ。
難しいけど、安泰だって言われてきた。ちゃんと問題は解ききったっていうし、普段からできていたから、試験に落ちるなんてことも、あまり考えられないけど。
きっと、彼も不安なんだ。ものすごく。
「…ちゃっちゃん」
「ん?」
帰る準備をするために、マフラーを巻いた。
これからは、初とお出かけをする。
「…ちゃっちゃん、元気ないね。なんかあったの?」
それなのに、背の高い右京くんに、出口を塞がれてしまった。