たぶん、トクベツちがいな恋。
近海とは、中学1年の時に出会った。
その時、好きでどうしようもなくて、半ば無理やり彼氏になってもらった珠理の親友だった。
あまり男の人は得意じゃないけど、珠理の周りの人の中で、いちばんに挨拶をした人。
あたしの目をじっと見て、話を聞いてくれる人だと思った。珠理が、近海のことを大切で大好きだというのが、一瞬で分かった気がした。
『俺、陸奥 近海。よろしく』
切れ長の大きい目をわたしも見つめた。なんとなく、心が安心した。
当時のあたしは、珠理と付き合えてしあわせいっぱいだったと思う。だって、一目惚れだった。あんなにかっこよくてやさしい人が、自分の彼氏だなんて、信じられないくらい嬉しくて。
でも、珠理があたしのことを好きじゃないことは分かっていたし、珠理には他にずっと好きな人がいることも知っていたから、1人になれば不安に襲われることの方が多かった。
…でも、珠理の前では、それを見せられなかった。ただでさえ振り向いてもらえていないのに、泣いてめんどくさい女にはなりたくなかった。
茶々は、可愛いから。それは分かってるから、珠理の前ではちゃんと可愛い女の子でいたかった。
だから、いつも笑うようにしていた。
それが、茶々のトクベツだった。
『…まーた泣いてる。今度はどうしたんだよ』
1人で不安に駆られていると、いつも近海は見つけてくれた。どうしてこんな時はいつも出会っちゃうのって、ずっと思ってた。めんどくさいなって思うこともあった。
それでも、近海の声を聞けば、近海の目を見れば、なんとなく、心は緩んで。
ボロボロと、涙がこぼれていく。
積み重なった不安が、じんわりと、和らいでいったんだ。