たぶん、トクベツちがいな恋。
「確かにそんな子と一緒にいたわね。アタシ、帰り際に一瞬会っただけだったけど。茶々、アンタとの約束すっぽかして、そっちに行ってたってわけ?」
「そう。熱出して倒れたんだって。試験直後に」
「…ふーん」
珠理は、ウキョウくんのことをまるで興味ないというように聞いていた。
俺ほど、気にしてはいないらしい。当たり前か。茶々のことを好きなわけでもなく、会ったこともほとんどないのだから。
「…でも、近海の気持ち、分かるなあ。アタシ」
オレンジに、フォークを突き刺した。プシュッという音とともに、果汁が飛び出した時、珠理のそんな言葉が降ってくる。
「…分かんの?」
意外だった。そんなこと気にしていたのかと、バカにされると思っていたから。まさか、「分かる」と言われるとは。
「分かるわよう。アタシだって、めごに片想いしてた時は、“ リョウちゃん ” に似たようなこと思ってたもの。正直、ものすごく邪魔だったわ」
「……あぁ」
珠理のいう“ リョウちゃん ” とは、めごちゃんの元恋人。珠理がなかなかめごちゃんに気持ちを伝えられなかったのは、彼の存在があったから。
…そういえば、珠理も俺と同じように、くるしい片想いしてた時期があったな。今のバカップルぶりからは想像もできないけど。
「高校2年のアタシの誕生日をした時、駅でリョウちゃんに会ったでしょ。あの時、めごったらアタシの方振り向きもせずに、リョウちゃんのとこ行っちゃって」
珠理は、また少し機嫌を悪くしながら、話しだした。昔話だ。
「そうだったな。あの時のお前、拗ねて大変だったもんな」
「当たり前じゃない。嫉妬の塊だったもの。なんでこんなに想ってんのに、そっちの方に行っちゃうんだって思ってた。めごがアタシのこと好きになるなんて、有り得ないって思ってたわ」
「…ふーん」
そういえばその時、拗ねた珠理をなだめるのに苦労したんだっけ。結局、その後はめごちゃんが何か良いことを言ってくれたのか、珠理の機嫌は戻っていたけど。
…こう考えてみると、コイツも俺と同じような想いをしてきたことになるのか。
なんか、おもしれーな。