たぶん、トクベツちがいな恋。


「確かにそんな子と一緒にいたわね。アタシ、帰り際に一瞬会っただけだったけど。茶々、アンタとの約束すっぽかして、そっちに行ってたってわけ?」

「そう。熱出して倒れたんだって。試験直後に」

「…ふーん」


珠理は、ウキョウくんのことをまるで興味ないというように聞いていた。
俺ほど、気にしてはいないらしい。当たり前か。茶々のことを好きなわけでもなく、会ったこともほとんどないのだから。


「…でも、近海の気持ち、分かるなあ。アタシ」


オレンジに、フォークを突き刺した。プシュッという音とともに、果汁が飛び出した時、珠理のそんな言葉が降ってくる。


「…分かんの?」


意外だった。そんなこと気にしていたのかと、バカにされると思っていたから。まさか、「分かる」と言われるとは。


「分かるわよう。アタシだって、めごに片想いしてた時は、“ リョウちゃん ” に似たようなこと思ってたもの。正直、ものすごく邪魔だったわ」

「……あぁ」


珠理のいう“ リョウちゃん ” とは、めごちゃんの元恋人。珠理がなかなかめごちゃんに気持ちを伝えられなかったのは、彼の存在があったから。

…そういえば、珠理も俺と同じように、くるしい片想いしてた時期があったな。今のバカップルぶりからは想像もできないけど。


「高校2年のアタシの誕生日をした時、駅でリョウちゃんに会ったでしょ。あの時、めごったらアタシの方振り向きもせずに、リョウちゃんのとこ行っちゃって」

珠理は、また少し機嫌を悪くしながら、話しだした。昔話だ。

「そうだったな。あの時のお前、拗ねて大変だったもんな」

「当たり前じゃない。嫉妬の塊だったもの。なんでこんなに想ってんのに、そっちの方に行っちゃうんだって思ってた。めごがアタシのこと好きになるなんて、有り得ないって思ってたわ」

「…ふーん」


そういえばその時、拗ねた珠理をなだめるのに苦労したんだっけ。結局、その後はめごちゃんが何か良いことを言ってくれたのか、珠理の機嫌は戻っていたけど。


…こう考えてみると、コイツも俺と同じような想いをしてきたことになるのか。


なんか、おもしれーな。



< 134 / 166 >

この作品をシェア

pagetop