たぶん、トクベツちがいな恋。


「でも、茶々はめごとは違うと思うわ」


皿の中のフルーツも、3分の1がなくなった頃、珠理は何気ない顔つきでそんなことを言った。

…めごちゃんと、茶々は違う?


「どういう意味?」

「んー…、これはアタシの憶測だけどね。茶々はその、ウキョウくんって子のことは、なんとも思ってないわよ」

「は?」


なんでそんなことが言い切れるんだと言いたかったけど。珠理も憶測だと言っていたので聞くのはやめた。


「近くにこーんなに自分のことを見てくれて、かっこよくて、頼りになって、ずっとそばにいてくれた人がいるのに。茶々がそんなことに気づかないとでも思う?」

「…もしかして、それって俺のこと言ってんの?」

「近海以外、誰がいんのよ」


…かっこよくはねーな。まったく、珠理は恥ずかしいことをサラッと口にしてしまうんだから、参ってしまう。言っててムズムズしないのか、コイツは。


「茶々はちゃんと分かってるはずよ。だからたくさん、謝ってくれたんでしょう。寒がりのあの子が、マフラーちゃんと付けないで走ってくるなんてこと、有り得ないじゃない。」

「……」

「茶々の本当の気持ちは分からないけど、あの子にとって近海は絶対にトクベツな存在よ。ずっとね」

「……」


…“ トクベツ ”

その言葉を聞いて、ずっと知りたかったことを思い出す。

目の前にいる男。珠理は、茶々がずっと好きだった男。珠理の前で笑うことが茶々のトクベツなんだと、言っていた。


「…珠理」

「ん?」


珠理が、俺が茶々にとってトクベツだと言うのなら、その根拠はなんだろう。


「…昔、茶々がお前のこと好きだった時、お前の前で笑っていることが茶々の幸せなんだって、アイツは俺に言ったんだ」

「……」

「…けど、茶々が俺の前で、笑うだけじゃなくて、弱いところとか泣いているところとか、怒っているところとか、そういう顔を見せてくれることが、俺はトクベツなんだと思ってた」



…茶々は、他の人の前で、弱いところを見せようとしないから。



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