たぶん、トクベツちがいな恋。


・・・


珠理がめごちゃんと晴れて両想いになれた日の夜、俺はほぼ徹夜で珠理の話を聞かされた。

話というよりは、一方的な惚気だったわけだけれど、そりゃあもうずっと、何時間も。

風呂から上がってすぐに電話がかかってきて、課題をしている間もベッドに入ってからも、ずっとずっと聞かされていた。


『だって近海、信じられる!? あのめごが、めごが、俺のことすきって言ったんだよ』

感情が高ぶっていたから、珠理丸出し。その状態がしばらく続いた。

眠い目を擦りながらも、「寝たい」とも言えず、なぜか言いたくもなく、ただその嬉しさに満ち溢れた声を聞いていた。

めごちゃんとの話は、正直内容は細かく覚えていないけど、とりあえず珠理が今までで1番幸せそうだったことは鮮明に記憶しているんだ。


『近海、俺たちってさあ、一時期すごい荒れてた時期があったじゃん』


午後2時ごろ。もういいだろ!と、いい加減飽きてきた頃に、珠理はしみじみとそんなことを言った。

“ 荒れてた時期 ”

それはきっと、俺たちがどうとも思っていない女を軽く相手にしていた、ちょっとした黒歴史のことだ。
遊びはとっくに卒業したのに、それを言われるとまだちょっと冷や汗をかいた。

ただの興味で快楽を優先していた自分を殴りたくなる。


『だけどね、当たり前だけど、全然違うんだよ。なんとも思ってない相手と、そうじゃない相手じゃ』

『……ふーん。まぁ、そりゃそうなのかもな』

『そうなのかもな、じゃあないんだって! ほんとに、なんつーかこう、触れてるだけで幸せの頂点に立ってる気分になる。 俺生きてんのかなって思っちゃったくらい』


分かりそうで分からない珠理の例えに、軽く考え込んだ。

幸せの頂点…。そんなの、俺はまだ感じたことがないなあと思いながら。



< 140 / 166 >

この作品をシェア

pagetop