たぶん、トクベツちがいな恋。
これは初めての経験なんだと、しばらく珠理は熱弁していた。
どうやら、めごちゃんとは良いところまでいったらしかった。…さすがに、最後まで手を出したわけじゃないとは思ったけど。珠理に限って、そんなことはないと思ってはいたけど。
それを確認したら、珠理にはしこたま怒られた。
『突然そんなこと、めごにできるわけないでしょう!?』
…らしい。珠理も珠理なりに苦労しているようだった。
それでも、想いが通じあって触れ合うのは心地いいことなんだっていうことを教えてくれた。
たぶん、この日は珠理の人生の感覚を大きく変えた日なんだっていうのが分かった。
その時、俺も思ったんだ。
いつか、コイツが言っている言葉の意味が、わかる日がくるのかなって。
俺が触れたいと思う人はひとりしかいない。
彼女に触れることができる日がくるとしたら、その日に俺の人生の景色は変わるのかもしれないと思った。
…そんな世界、すぐに搔き消したけど。
『近海も、絶対この感覚を感じてほしい。だから近海が本気で頑張るって時は、アタシ本気で応援するから!』
『ハハッ、ばーか』
愛に飢えていた珠理が、初めて“ 愛 ” を知った日なんだと思った。
彼にとっては、トクベツな日。
きっと、俺が感じるよりも、ずっと。
俺にいつかそんな日が来たとしても、きっと珠理よりは落ち着いていられると思ったんだ。
本当に手に入れたいものに触れた時の気持ちなんか、この時は想像もできなかった。
そう、想像も、できなかったんだ。