たぶん、トクベツちがいな恋。


そういえば、俺は茶々に下手くそながらにも、告白をしてしまったんだった。すごく、ダサい言い方しか、できなかったけど。


もしかして、今日はそのことについて話すために来たとか…—

「…っ」

いや、絶対そうだろ。それ以外、何の用があるっていうんだ。


そう思うと、手の平に大量の汗をかいた。ぼうっとしていた頭ははっきりとしてきて、冷や汗まで生まれてくる。



…あぁ、嫌だ。

やっぱり、勢いだけであんなこと、言うんじゃなかった。

今なら、まだやり直せるだろうか。あれは勢いで言ってしまったんだって、あんな風に伝えたかったわけじゃなかったって。

そうすれば…——




「ごめんなさい…!」



経ってしまった時間を戻そうと、彼女の名前を呼ぼうとした、その時。


…突然茶々は、俺に向かって、頭を下げた。



「…………え?」


一瞬、何が起こっているのか分からなかった。今まで、茶々にこんな風に面と向かって謝られたことがなかったから。

思わず、目が点になる。



「ごめんなさい…」

「…」


垂れた長い髪。震えている声。見えない顔。ごめんなさいって…一昨日のことが?


「近海を雨の中待たせたせいで…、雨の中ひとりで帰らせちゃったせいで、風邪ひいたって…」

「……あ、あぁ〜〜」


そういうこと。 いや、というかこれは、俺が勝手に怒って勝手に帰ってきただけであって。


「別に、お前のせいでもなくね?」


わざわざ、東京まで見舞いに来なくても大丈夫だったのに。
そう言おうと思ったけど、なんとなくやめた。さっかく来てくれたのに、そんなこと言うのはさすがにないなと思った。

…それに、顔を見れたのは、俺だってうれしい。



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